「清水章充さんが聞いた、モノカキ50人の描く未来」

開催日:2017年11月29日(水)

第7回目のゲストは、外資系広告代理店でコピーライターやプランナー、営業として活躍し、昨年には『コピーライターが教える 子どもを幸せにする名づけのコツ』も出版された清水章充さん。「これからどう生きていくのか?」をテーマに、同世代のコピーライター50人以上にインタビューをされた活動の成果を初披露していただきました。また、イベントの後半では、モノカキの未来を考えるワークショップも実施。今のモノカキたちが置かれている立場をいろいろな視点で見つめ直し、これからの生き方を考えるきっかけにもなりました。

文・西道紗恵(parks)

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profile

ゲスト:清水章充さん(株式会社I&S BBDO)

東京都小金井市出身、1977年生まれ。医療機器メーカーでの営業、学生援護会での求人広告のコピーライターを経て、2005年にI&S BBDO関西支社に入社。前半の6年間をクリエイティブで、後半6年間を営業として過ごす。2016年「コピーライターが教える子どもを幸せにする名づけのコツ」の執筆を機に、コピーライター人脈が一気に拡がる。彼らとのやりとりを通し、同じコピーライターという名刺を持っていても、それぞれ仕事内容・スタイル・描く未来はまったく違うことを知る。「その違いを整理して伝えたら、喜んでもらえるはず」というのが、登壇のきっかけに。

広告の未来から、代理店が消える?

「広告代理店の、未来が不安なんです。」

外資系の広告代理店で、現役で働く清水さんが発したこの言葉に、私は「なんで??」という気持ちになりました。だって正直、フリーランスで活動するよりも、代理店に身を置くほうが将来的にも安定で、規模の大きい仕事にも関われそうだし、「大手代理店勤務=憧れの的・出世」というイメージがあるからです。(フリーランスの方、申し訳ございません。若手の生意気をお許しください……)

でも、清水さんのお話を伺う中で代理店が“消える”かどうかはさておき、代理店に“頼らない”広告の未来も広がっていることを知りました。今回のモノカキモノ会議は、どのようにして書く・作るかではなく、「モノカキとしてどのように生きるか」を考えさせられた2時間。

清水さん自身も、これからのキャリアや生き方を改めて考えるために、コピーライター51人に会い、「今何を考えて仕事しているのか」「これからどのように生きていくか」を話し合ったそうです。今回のレポートでは、特に私が印象にのこったモノカキの生き方や、未来についてまとめたいと思います。

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51人のコピーライターからみる、モノカキの未来。

清水さんが会ったのは現役コピーライターばかりではなく、異業種に転職した元コピーライターなど、全員で51人。今回は「フリーコピーライター」「代理店で働くコピーライター(クリエイティブ・ディレクター)」「プロダクションを立ち上げた人」「モノカキから足を洗った(辞めた)人」という4つのタイプに分けて、それぞれが描くビジョンをご紹介してくださいました。

●モノカキが描く未来「フリーコピーライター編」

私は今プロダクションに所属していますが、コピーライター仲間や先輩からは必ずと言っていいほど「西道さんは将来独立するの?」と聞かれます。フリーランスで活躍されている方も多いからでしょうか?一定期間は組織に属して修行を積み、ゆくゆくは独立するというのが一般的なルートとして根付いているように感じます(私は絶賛修行中☆)。

そんなプロダクション所属コピーライターの私にとって一番身近な未来で、知りたかったのがこのパート。実際にフリーランスの方々がどのような姿勢で仕事に取り組まれているのか興味津々でした。

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清水さんが聞きだした、フリーコピーライターが抱いているホンネ。それは、「10年後誰から仕事を受けているのか分からない」ということだそうです。組織に属していると「仕事があって当たり前」と思いがちですが、それすら当たり前でない世界に飛び込む覚悟が必要だと思いました。

また、ひとくちに「フリーコピーライター」と言っても、『いつまでも現場で書きつづけたい派』『書きつづけるつもりはない派』の2タイプがいるのだとか。

『いつまでも現場で書きつづけたい派』はスピーチライティングなどの広告以外の領域まで守備範囲を広げようとしていたり、反対に医療系ライターなど専門性を追求することで「ずっと需要がある」という状況を生み出そうとしていたり。

一方で『書きつづけるつもりはない派』は会社経営のコンサルティングや、プロデューサー、ディレクターとして活躍する道へ進んでいる方もいらっしゃるそうです。

●モノカキが描く未来「代理店で働くコピーライター・クリエティブディレクター編」

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代理店に所属するライターの心の中にあるのは「ライター個人としてどう生きるか?」よりも、「組織をどう動かしていくか?」ということだそう。組織に所属しながら、変化する業界の流れに対応し、どうやって次の世代を育てていくかに主眼を置いているとのことでした。

企業やキャリアによるとは思いますが、コピーライターとしてバリバリ書いて、力を発揮したい!という人には、実は向かない環境なのかもしれないと感じました。

●モノカキが描く未来「プロダクションを立ち上げた人編」

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ライターとして独立するのではなく、プロダクションを立ち上げるという選択肢は、私の頭の中にまったくなかったので新鮮でした。

なぜプロダクションを設立するのか?清水さんが聞き取りを行う中で多かった意見は、「広告業にとらわれず、企業が抱えるコミュニケーションの課題をすべて解決したい」というものだそう。ブランディングに、商品開発、リクルート……、企業活動のさまざまなシーンで「言葉」を武器にサポートする。

私は仕事をする上で、ルーティンワークよりも、さまざまな職種の人と関わったり、自分の知らない世界にふれられることにおもしろさを感じているので、これも「自分に合っている道かも?」と感じることができました。

●モノカキが描く未来「足を洗った人編」

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最後に、ライター職から離れた人たち。 ライターを辞めた理由としては、食べていくことに不安を覚えたことや、結婚や育児などのライフイベント、プライベートな時間も大切にしたい想いや、起業など。私自身、結婚・出産願望もあるので、生活リズムが不規則になりがちなこの業界にずっと身を置いていても大丈夫なのか?と不安を抱いたことも、正直あります。

転職先として、断トツ人気1位なのが企業の宣伝部や広報部だそう。転職理由には、休みがきちんと確保できる、安定性があるなど、仕事とプライベートをしっかり分けたい人が多いという印象を受けました。

あとは、仕事の貢献度が売り上げに直結するマーケティング職や、レンタカー、福祉などの異業種へ転職した人も。書くことが仕事ではないにしても、コピーライターとしての専門性(コンセプト設計やライティング力など)は、どの業界・職種でも活きてくるのではないかと思います。

みんなで考える「これからのモノカキ」とは?

イベントの後半では、参加者がグループを組んでディスカッションを行うワークショップを行いました。

テーマは、

・モノカキを取り巻く環境

・モノカキに求められていくスキル

・モノカキの活躍できるフィールド

・憧れる姿、成功像

の4つ。

自己紹介からはじまり、おやつをつまみながら、みなさん真剣に議論されていました!

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ディスカッションの後、グループで出た意見を発表!

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どんな意見が出たかというと……

〈モノカキを取り巻く環境〉

・WEBやSNSなど、メディアが多様化している ・マス広告、紙媒体の縮小 ・コンセプトやコピーがど真ん中にある広告が少ない ・誰でも書ける時代 ・単価設定が難しい(ライティング費そのものが下がっている)

〈モノカキに求められていくスキル〉

・誰にでも分かる、やさしい言葉で書く ・自分にしか書けないものがあると強い ・商材に合わせた言葉えらび ・聴く力  ・創造力より、想像力 ・ストーリーテラー ・コミュニケーション力×人間性  ・コンセプト×コンテンツ(企画力) ・イラストレーターやプログラミング、カメラなどのスキル ・SEO対策

〈モノカキの活躍できるフィールド〉

・言葉で物事や人を動かせる ・ピンチをチャンスに変えられる ・小説家、作家、映画監督などの自主制作 ・デジタルマーケティングが伸びるのでは? ・シナリオライター、医療系ライターなど専門領域をもつ 〈憧れる姿・成功像〉 ・会社を立ち上げる ・みんなが忘れていたことを思い出させる ・言葉の力で、人に気づきや新しい力を与え、コミュニティをつくる ・文章に困った人に頼られる ・刺さる言葉をつくる ・商業デザイン×アート
目指す方向性やビジョンによって、身につけておくべきスキルや活躍のフィールドは異なるはず。しかし、もし私が将来的にフリーライターになるのであれば、専門領域をしぼるまではいかなくとも、自分の強みや、自分にしか書けないテーマを持っておきたいと強く心に決めました(今はパッと思い浮かびませんが)!

また、プライベートと仕事をはっきり分けたい人には向かないけれど、場所も時間も問わず、どこでもできるコピーライターという職は改めて大好き。言葉は仕事だけでなく、人の“生きる”に欠かせない存在。言葉を武器に、言葉を自由につかって生きていけたら、より人生が豊かになりそうです。

ワークショップを通して、まだまだ未熟だなあと落胆しつつも、コピーライターにはいろんな道や選択肢が広がっていて、自分の可能性もどんどんひろげていけることに、ワクワクした時間でした。


時には自分を客観的にとらえる時間も必要ですね!

今回のモノカキモノ会議を通して、今の広告業界やモノカキ市場において、自分の立ち位置を知ることができました。その中で自分に足りないもの、伸ばすべきところが前よりも明確になったと思います。目の前の仕事にぐっと集中して、ひたむきに書き続けることも大切ですが、時には周りを見渡して、自分を客観的にとらえる時間も必要。どんな人生を歩んでいくかを見つめ直す良いきっかけになりました。

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↑イベント終了後も、みなさん席を立たずにディスカッション続行。

モノカキモノ会議では、「モノを書く」ということを仕事のベースにしている人たちが集まり、情報を渡しあえる場所として、今後もイベントを定期的に開催していく予定です。 お会いできなかった皆さまも、ぜひお気軽にご参加ください。

議題も受けつけておりますので、みなさまからのご意見お待ちしておりま〜す!