- レポート
「SNSを使ってコピーライターとして生きていく方法」
開催日:2017年2月22日(水)
広告コピーを書くひと、エディトリアルに携わるひと、Webライティングをするひと、ソーシャルな課題を伝えるひと……。『仕事の中心に「言葉」を置くひとたちの集まる場所をつくりたい』、そんな思いではじめた『モノカキモノ会議』。 第四回目となる今回ははじめての東京開催、ゲストにはデジタルからキャンペーンまで幅広い領域で話題となるコピーを手がける、(株)コピーライターの長谷川哲士さんをお招きしました。
profile
長谷川哲士さん(株式会社コピーライター/株式会社噂)
はせがわ・てつじ/1984年島根県松江市生まれ。大学卒業後、リクルートに勤めた後、リーマンショックで無職に。カヤックを経て、2016年1月に株式会社コピーライターを始動。12月に株式会社噂のCEOに就任。Twitterの「コピーライッター」の中の人。広告賞受賞歴多数。書いたコピー「元カレが、サンタクロース。(なんぼや)」「元カレも、今カレも、オカモトです。(オカモト)」など。
自己紹介から全力投球。
はじめてのクライアントに自分を紹介するとき、皆さんはどんな風にアピールをしていますか?「これまでの実績をプリントアウトして紙芝居形式で」「ポートフォリオサイトを作成してそれを閲覧しながら」など、皆さんそれぞれのやり方をお持ちだと思います。そんな中、長谷川さんが大事にしているのが次の3つ。
・プロジェクターを使う
・音とアニメーションをガンガンつける!
・笑いをとりにいく
「プロジェクターを使うのは、ひとつの画面を共有して、同じスピードで次のスライドへ移っていってほしいから。紙で配るとどんどん先のページをめくる“メクラー”がいますし、なかなか歩調が揃いません。2~3人の前で話すときは、直接僕のパソコンのモニターを見てもらいます。音やアニメーションの効果は他にやっている人がおらず目立つから。笑いをとりにいくのも同じような感覚で、記憶に残してもらうためです。それにまあ、どうせなら楽しいほうがいいじゃないですか(笑)?」
この日、長谷川さんは実際に普段されている方法を使って、自己紹介をしてくだいました。たとえばこんな具合。
松任谷由実の「恋人はサンタクロース」に、国生さゆりの「バレンタインデーキッス」、B’zの「ギリギリchop」。それぞれの音楽に乗せて長谷川さんがブランド品の買取『なんぼや』さんのために書かれたコピー、「元カレが、サンタクロース。」「バレンタインデー寄ッ付。」「義理義理チョップ。」がリズミカルに紹介されていきます。また、制作の裏話や広告にこっそり仕組まれたメッセージ、プロフィールシートの下ネタあり/なしバージョンなど、笑いどころ、ツッコミどころがたくさん。自己紹介をされる側として感じたのは、とにかく「仲良くなりましょう!」という雰囲気でした。どこを切り取ってもサービス精神で溢れていて、会って数十分であってもとても距離が近づくような気がしました。
また、その他の自己紹介アイデアとして、オリジナルのブラウザアプリを制作することや、スマホのカメラロール機能を使っていつでも簡単に自分の仕事を紹介できるようにしておくのもおすすめとのこと。交流会やイベントなどで会った初対面の人にも、すぐに自分の実績を伝えられるのは大きなポイントとなりそうですね。
Twitterでの拡散が、SEOの強化に。
次に長谷川さんが紹介してくださったのがTwitterの活用法。そのメリットをこんな風に話されました。
「拡散するとSEOとしてとても効果的です。自分の名前、仕事が検索結果画面の上位に出てくることは、自己アピールの際の大きなアドバンテージになりますよ。社名に『コピーライター』とつけたのもそのため。Twitterで『コピーライター』という単語を入力すると、僕の名前が真っ先に上がってくるようになっています」
どんな巨匠コピーライターよりも強いSEO力を持つ長谷川さん。初めて会う人、これから一緒に仕事をする人にとって、これは大きなインパクトになるのではないでしょうか。この考えはクライアントワークを成功に導くためにも活かされていて、多くの仕事でSNSでシェアしたくなるような工夫がされています。たとえばエイプリルフールの日に行った「TENGA渋谷ジャック偽画像」、18歳の心をギリギリの下ネタと恋心で刺激する「和歌山選挙キャンペーン」、HTMLのソースコードを見た人だけが気づくことができる「サントリー 人類以外採用企画」……。多くの仕事が納品時のクオリティだけでなく、SNSでシェアしたくなるスパイスを加え、より多くの人に届く工夫がされています。
とはいえ、Twitterで拡散させるためには、そもそも最初に発信するアカウントにそれなりの数のフォロワーがいることが大前提。そのようなTwitterアカウントを所有できるのは、ごく一部の限られたクリエイターだけなのでは?
「いえいえ、Twitterボットをつくればあっという間ですよ。僕の場合は『@copy_writter』という広告コピーをつぶやくアカウントを運営していますが、コピーに限らず、名言、名台詞など、なんでも構いません。そうやってフォロワーを獲得したアカウントで、自分の本アカウントをリツイートすれば、すぐに多くの人に届けることができますよ」
仕事を招くツール、Facebook。
自己紹介に全力を注ぎ、Twitterでの拡散に積極的に取り組んでいる長谷川さんが、「最終的に仕事を招くツール」として利用しているのがFacebookです。Facebookでは自分の仕事に「#コピー書きました」というハッシュタグをつけ、公開範囲の制限を設けずに公開されています。
「大事なのは公開範囲を『友達の友達』などに限定しないことです。これから一緒に仕事をする人はまだFacebookでつながっていないかもしれない。そんなときに公開範囲を限定していたら、自分の仕事を知ってもらえません。だから、子どもの顔が写っているなど、よほどプライベートな投稿でない限り、制限を設けないことをおすすめします」
また、積極的に仕事を公開している長谷川さんですが、すべてを投稿しているわけではないそうです。
「投稿は自分がやりたい種類の仕事、増やしていきたい分野などが中心です。逆に言うとあまりやりたくない仕事は表に見せないようにしています」
その他にも「連載メディアを持っておくといい」など、自分をアピールする方法をたくさんお話くださった長谷川さん。その言葉の端々から感じられたのは「自分も、仕事も、人に知られなければ意味がない」という思い。だからそのためにはとにかく工夫をする。社名を『コピーライター』にこだわったのも、仕事の中に「気づく人だけは気づく隠し味」を加えることも、Twitterボットを運用することもみんなそのため。いかに自分と仕事を知らせるか、その一点に集約されているようでした。
「自分を知ってもらうこと」はフリーランスにとって欠かせない営業活動。また、仕事を拡散させる重要性やコツについては、会社に所属している方にとっても大いに役立つ内容だったのではないでしょうか。
今回のモノカキモノ会議は、いくらいい仕事をした!と満足していても、それが広く知れ渡らないと意味がないと感じた2時間でした。これからはクリエイター自身にとっても発信力が問われる時代。まずはみなさん、Twitterボットをつくることから、はじめてみませんか?
『モノカキモノ会議』ではこうしたイベントを定期的に開催していく予定です。この日、お会いできなかった皆さまも、ぜひお気軽にご参加ください。議題も受けつけておりますので、みなさまからのご意見お待ちしております!