「中 (の人の) 中 −公式ツイッターで考えた、ことばとか広告のゆるくない話−」

はやくも、第3回目の開催となる今回のゲストは、シャープ公式ツイッター @SHARP_JP を、たったひとりでフォロワー数32万にまで育て上げた山本隆博さん。「ゆるい」ツイートの極意や、SNSと生活者の関係性など、たっぷりとお話いただきました。

profile

山本隆博さん(シャープエレクトロニクスマーケティング株式会社)

フォロワー数32万を越える、シャープ公式ツイッター @SHARP_JP の中の人。宣伝部にて長らくTVCMをはじめ、マスキャンペーンのクライアント企業側で制作を担当しつつ、SNSアカウントの運営に。手探りではじめたものの、時にゆるいと称されるツイートで、ニュースやまとめ記事になることが日常となる。2014年大阪コピーライターズクラブ最高新人賞。突破クリエイティブアワード2015 審査員特別賞。 また10代のころから、ターンテーブルを使った音楽に携わる。クラブでのDJから変遷を重ね、改造したレコードや針を使用した即興演奏でノイズ/サウンドアート系ミュージシャンとの共演を続けている。最近作はスイスのアナログシンセ奏者Jason Kahnとsax/tapeのTakuji Naka とのトリオ作「yugue」をリリース。

 

 

なんとなく、親近感がある。こちらが中の人。

もちろん私も、シャープ公式アカウントのフォロワー。ツイッターを開くたびにちょこちょこ登場する、ゆるツイートのファンでした。「ついに、あの中の人に会えるぞ…!(≧▽≦)」

久しぶりに感じた、このワクドキ感。

img_4496

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

こちらが中の人、山本隆博さん。妙に感じる親近感が、印象的でした(すみません!)。

当日は、ツイッターでつぶやくもよし、実況中継するもよし。公式アカウントへ質問を投げかければ、会場で直接答えてもらえるという、

 

_人人人人人人人人_

>特別大サービスも<

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

 

(´-`).。oO(今回はこんな感じのゆるトークで、レポートをお届けします)

 

企業ツイッターの役割って?

山本さんがまずお話されたのは、「企業ツイッターはことばで地道に、共感を介して未来のお客さんを耕す行為」だということ。ツイッターは従来のマス広告とは違い、商品の売上がすぐに伸びるわけではありません。ツイートを通して、読んだ人の共感を生み出し、その行為を積み重ねる。そして、その人が家電量販店に行ったときに、シャープのことを思い出してほしいという想いでツイートされているそうです。長い時間をかけて、じっくりとお客さんとの関係を築いておられるんですね。

 

だから、シャープの公式ツイッターは、宣伝色がそこまで強くありません。

たとえば、ツイッターを通してお客さんと会話したり、時にはコールセンターの役割を果たしたり、山本さんの私生活を写真で切り取ったり、アニメキャラの誕生日を祝ったり…。

 

_人人人人人人人人人人人_

>大手企業なのに超ゆるい<

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

 

山本さんは、「広報 IR」「宣伝販促」「顧客満足」「ファンづくり」の4方向でツイートされているそうですが、「役割を限定することなく、相手に応じて、まともな行動をとる」というのがモットーだそうです。

 

_人人人人人人人人人人人人人人_

>山本さん何でも屋じゃないか説<

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

 

それに、ただゆるいだけではありません。その証に、ツイッターのアンケート機能を利用したところ、「シャープ公式アカウントのゆるいツイートを楽しんでいる」と答えたフォロワーの割合は85%。そのうち、「今後、シャープ製品を買うことがあれば、シャープ公式アカウントのことが脳裏をよぎると思う」と答えた、フォロワーは86%。

 

_人人人人人人人人人人人人人人人_

>未来の買い物に好影響を与えてる<

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

 

ゆるいツイートは、企業イメージにじわじわと親近感を与えて、確実にシャープファンを増やしていたんですね(*´∀`*)

img_4483

 

(´-`).。oO(次は、広告への想いのお話)

中の人の、ちょっとした「素」がファンをつくる。

公式ツイッターを見ていれば分かるのですが、おそらく勤務時間外だろうという時間にもツイートしていたり、リプライにも丁寧に返答している山本さん。なぜ、そんなにもツイッターに熱心なの?とSNS疲れしないの?と疑問を抱くところですが、こんなコミュニケーションを目指してらっしゃるそうです。

 

・友だちとの会話に溶け込む

・タイムリーな話題を提供する

・ときには有益な情報源になる

・困ったときには頼りになる

 

情報がありふれ、広告は人々には伝わらないとも言われる世の中で、お客さんに受け入れてもらうための鍵は、「中の人」の存在をあえて打ち出すこと。

「中の人」という存在を媒介に、リアルな感情が伝わると、企業のことばが「体温」を帯びる。広告を聞いてもらえるようにするには、人格をもって、生活者の心に寄り添うことが大切だとお話いただきました。私はこの話を聞いたときに、ツイッターでの交流は「企業とお客さんの関係」というよりも、「1対1の人間関係」だと感じました。

 

(´-`).。oO(さいごに、ツイッター(広告)と人の関係について)

よわい人に、よわい言葉で。

img_4518

このレポートをご覧になられたみなさんは、ツイッターをされていますか?されている方は、どんなときにツイッターを開きますか?

ちなみに私は、家にいるとき、移動時間、休憩タイムなど、ひとりの時間に、タイムラインを眺めていることが多いです。山本さんが着目しているのは、この「孤独な時間」。

 

山本さん(´-`).。oO(スマホでSNSを覗くことは、自分の中の孤独を覗くことなのかも

 

山本さんいわく、広告と人の関係は、人間関係と一緒。人間って、自分より立場が上の人には憧れるし、下の人には優越感を抱きますよね。広告も同じで、かっこいい広告は、ステキ!(*´ω`*) だと思うし、ネタ系の広告は ワロタw\(^o^)/ という感情を抱きます。

従来のマス広告を振り返ってみると、どれもちょっと強そうなイメージ。でも人は、そこまで勇ましく生きていないし、そもそも、広告に対しても強さや憧れを求めていないのではないかというのが、山本さんの見解です。孤独な時間にツイッターを覗く人に、強いことばを投げるのは無茶がある。だからこそ、上から目線でも、偉そうにでも、一方的にでもなく、同じ目線になって、「私もあなたと同じ」だと「よわい言葉」で伝えること。

 

(ふだん、ひとり暮らしで孤独を感じまくっている私は、このあたりから正直、涙腺が崩壊しかけてたのは内緒(´;ω;`)

img_4475

最後に山本さんがお話されたのは、「広告から離れ、どうコミュニケーションするか」ということです。広告が敬遠されがちな世の中で、広告という行為・言葉に、共感と信頼を取り戻すために、お客さんの時間軸で、ファンの心に直接響くことばで伝える。そのために、山本さんは社員を半分やめている感覚なんだとかΣ(゚Д゚)

どこまでも、お客さんにまっすぐな山本さん。そりゃ、中の人としてモテるわけですね(●´ω`●)


私の孤独な心情をわしづかみにされた、あっという間の2時間でした。たった140文字という限られた枠内のコミュニケーションの奥には、山本さんの「人に寄り添う想い」があって、1対1の人同士の関係性が育まれていました。ふだん、コピーを書いていると、どうしても漠然とした大多数のターゲットにむけて書いてしまいがちなのですが、今回のモノカキモノ会議を受けて、「ひとりを想い、ひとりにむけて書く」ことをより意識しようと思いました。

img_4536
↑懇親会の最後に記念撮影(≧∇≦)/

2016年5月にスタートした『モノカキモノ会議』。「モノを書く」ということを仕事のベースにしている人たちが集まり、情報を渡しあえる場所として、2017年もイベントを定期的に開催していく予定です。この日、お会いできなかった皆さまも、ぜひお気軽にご参加ください。2017年も、どうぞよろしくお願いいたします(`・ω・´)ゞキリツ

 

文・西道紗恵(parks)