くらたまなぶさんに学ぶ「ほんもののブレスト」

開催日:2016年7月23日(土)

株式会社TAMで行われたワークショップ、「ほんもののブレスト!」に参加してきました。

講師はリクルート社で「とらばーゆ」「フロム・エー」「じゃらん」など、14のメディアを創刊・起業し、『創刊男』の異名を持つくらたまなぶさん。

常に時代のニーズを捉え、新たなメディアのカタチを提案してきたくらたさん流アイデア創出術を少しだけ見せていただくことができました。

profile

くらたまなぶさん

1979年株式会社日本リクルートセンター(現・リクルート)に中途入社。翌年の「とらばーゆ」にはじまり、「フロム・エー」「エイビーロード」「じゃらん」「ゼクシィ」「ダヴィンチ」など、20年の間に創刊・起業したメディアは14に上り、今日のリクルートを築き上げた中心人物に。リクルート新規事業開発室長、情報編集局・編集制作統括室長、中央省庁各種委員を歴任。1998年に同社をフレックス定年退社し、あそぶとまなぶ事務所(現・株式会社あそぶとまなぶ)を設立、経営コンサルトを主に、講演・執筆活動などを行う。

アイデアは「ヒアリングとブレスト」の往復で

アイデアを考えるとき、数字やお金に意識を向けがちになってしまいますが、まずは「ヒアリング」と「ブレスト」を繰り返すことが大切。数字よりも人の思いや企業の理念に立ち返りつつ、最初は漠然としていたターゲットもヒアリングを重ねるうちにはっきりと見えてくることもあります。

「ヒアリング相手は身近な相手で結構。お金を払って話を聞いても、褒め言葉しか出てこないでしょう? まずは同僚、友達、家族など、身の回りの人からはじめればいいんです。さらにうまくなれば自分ひとりでできるようになります」(くらたさん)

ヒアリングで本当の気持ちを聞き出すことができれば企画のヒントにし、ブレストに役立てます。考えた企画を誰かに伝えるときに大切のは3つ。それは「言葉」「絵」「数字」(くらたさんは『企画の3大ツール』と呼ばれていました)。思いやコンセプトを分かりやすい「言葉」にし、一目で概要を認識できる「絵」を添え、目指すべき目標などを簡単な「数字」にします。言葉だけでは受け手ごとにイメージが異なりますが、絵を添えることで明確になり、数字が具体性を与えます。

 そうすることで考えた企画がブレることなく、相談相手へ。ブレストの際には是非意識したいと思いました。

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『じゃないゲーム ソロ編』で頭の体操

数字やロジックを組み立てるのに使うのは左脳、ひらめきやブレストに使うのは右脳。まずはじめに右脳のエクササイズとして、『●●じゃないゲーム』が行なわれました。これは●●の部分に名詞(アイテム名)を入れて、「●●だけど●●じゃないもの」を考えるというゲーム。この日のお題はハンカチでした。

参加者全員がくらたさんと1対1で「ハンカチだけど、ハンカチじゃないもの」という課題に取り組みました。参加者からはくらたさんに導かれるように「信号」「風呂敷」「ペット」「ロープ」「ヘアアクセサリー」など、さまざまなアイデアが出ます。くらたさんはそのひとつ一つに大きくうなずき、笑い、いろいろな質問を繰り出し、より具体的な話を引き出していかれます。参加者皆がおしゃべり上手になったような感覚で、会場はたくさんの笑いに包まれていました。

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『じゃないゲーム ペア編』で話し方、聞き方を訓練

『●●じゃないゲーム』は話し手にとってはブレストの練習に、聞き手にとってはヒアリングの練習になります。そこで続いては『●●じゃないゲーム ペア編』を実施。参加者が二人組みになって、ゲームの続きを交互に行います。

くらたさんからは話し手、聞き手にそれぞれヒントが与えられました。

【話し手へのヒント】

●「5W2H(How/How Much)」を意識すること

●何も思い浮かばないときは人生で一番楽しかったことor辛かった思い出を下敷きにすること

【聞き手へのヒント】

●聞き手は「アイヅチの4段活用」で、もっと話したいという空気を作ること

「アイヅチの4段活用」とは以下の4つです。

・首タテ……上下に大きく振るほど効果的

・ア行とハ行……10音を駆使して、話を親身&曖昧に受け止める

・用語……「なるほど」「そうですね」など、相槌になるような言葉を駆使する

・褒める……徹底的に話し手を褒めて、盛り上げる

話し手、聞き手、双方がくらたさんのヒントに注意しながら、『●●じゃないゲーム』を行います。実際にやってみると、意外とアイデアは出るものだなという感覚。普段の仕事でも企画に行き詰まったときこそ、誰かを誘ってヒアリング&ブレストをしてみようと思いました。

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『しりとらずゲーム』で、複数人でのブレストを体験

最後に4〜5人がグループになって「しりとらずゲーム」を行いました。これはひとりが「○○(名詞)と言えば」と3分程度話した後に「そんなわけで●●(別の名詞)」と次の人にテーマを振るというもの。テーマを振られた人は「●●(別の名詞)と言えば」と3分程度話し、同じように「だけどやっぱり△△(さらに別の名詞)」と次の人へとリレーしていきます。最後の接続詞は無意味なほどよく、テーマはできるだけ飛躍している方がグループでのトーク全体が広がっていきます。

ここでも「じゃないゲーム」での話し手、聞き手のコツが活きます。話し手はなるべく具体的に話しつつ、聞き手はみんなでもっと話したい空気を作ります。自分にどんなテーマが振られるかわからないので、頭の中で話を準備する時間はありません。本当に3分も喋れるのかなという不安もありつつ、こちらもやはりやってみると意外とできました。頭の中に浮かんだ光景、状況、セリフなどを片っ端から言葉に……。すると自分でも思ってもみなかったような方向に話が向いていくので、話すほうも意外と楽しめます。

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この日のワークショップは3時間足らず。かなり集中して大勢の話を聞き、自分も考える間も無く話したので、終わった後はランナーズハイのような状態に。心地よい疲れが残りました。

「マーケティングや広告を効果的に行うには、ロジカルな戦略が欠かせませんが、その戦略を選ぶ際には選択肢は一つでも多い方がいいに決まってる」(くらたさん)

そこで、選択肢をたくさん用意するためにも、何度も繰り返しヒアリング&ブレスト。悩みやターゲットを洗い出し、自由に、たくさんの選択肢を話し合うことが大切です。

「『●●じゃないゲーム』は実際のクライアントワークでも自主的に行うといい」とはくらたさん。担当している商品やサービスなどの名詞を●●の中に入れて、いろいろな可能性をブレストすると新しいアイデアが生まれそうです。いいアイデアはどんどん自主提案しても面白そうだし、もしクライアントと一緒にブレストをすればいい関係が築けるのではないでしょうか。

そんなわけで、とても有意義だったくらたまなぶさんのワークショプ。少しでも自分の力にして、仕事に活かしていこうと思います。

最後にくらたさんオリジナルのマニュアルを貼り付けておきます。皆さんの参考になれば幸いです。

新規事業開発マニュアルver.10.4.(囲みなし)
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